旅の188日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
ケースの中の男に、ついに大きな変化があった。
午前中の観測で、彼の瞼が一瞬だけ震えたのだ。ほんの刹那、微細な動きだったが、全員がその瞬間を見逃さなかった。心拍数も上昇し、脳波は覚醒直前のパターンを示していた。
並行して調べていた球体の信号も、これまでにない強度を記録した。周期はこれまでの数列の延長ではなく、不規則でありながら繰り返しの多い「波」となって現れた。解析班は「意識の乱れが外部に投影されている」と考えている。もしそうなら、彼が目覚めようとする内面の動きそのものが信号に映し出されているのかもしれない。
午後には再び静けさを取り戻したが、誰もが息を潜めるように観測を続けていた。彼が目を開けるその瞬間は、もう避けられない。漂流船の沈黙が終わるとき、僕たちは何を目にするのだろうか。
夜、自室で記録を見返すと、心臓の鼓動が自分の耳にも強く響いているのを感じた。
それは恐れか、それとも期待か――答えはきっと、もうすぐ示される。
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