旅の191日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日もケースを注視した。午前中、男の瞼が再び小さく動いた。今度は一瞬ではなく、何度か連続して震えるように反応があった。脳波もそれに呼応するように波形を乱し、短いながらも「覚醒反射」と呼べる活動を示していた。
同時に、球体の信号も活発化した。これまでの規則的な数列ではなく、途切れ途切れのリズムが連なり、まるで何かを「伝えよう」としているかのようだった。解析班は、彼の神経活動の変化と信号のパターンを重ね合わせ、ほぼ同時に発生していることを確認した。もはや関連性は疑いようがない。
船内には緊張感とざわめきが広がっている。誰もが「次に目を開けるのは今日か、明日か」と思っているはずだ。僕自身も記録を取る手が落ち着かず、視線が何度もケースの方向へ吸い寄せられた。
夜、自室で考え込んだ。もし彼が目覚めたとき、その最初の言葉や仕草は、僕たちにとってどんな意味を持つのだろうか。恐怖か、希望か。
答えは近い。そう確信できる一日だった。
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