旅の193日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日、ついにケースの中の男が明確な「覚醒の動作」を示した。
午前中の観測で、瞼がわずかに開き、光に反応するように目が動いたのだ。完全に目を開いたわけではなく、すぐに再び閉じられたが、確かに外界を感知した兆候だった。心拍も安定して上昇し、呼吸は深く強いリズムへと変化した。
同時に球体の信号も劇的に変化した。これまでの数列的なパターンではなく、断続的で重層的な光の波が発せられた。規則性はあるものの、単純な繰り返しではなく、意図的な「変化の連鎖」に見える。まるで彼の覚醒に呼応し、外へと「声」を放ったようだった。
船内は騒然としたが、すぐに静まり返った。誰もがその瞬間を見逃すまいと息をひそめ、ただ観測データを凝視していた。僕自身も言葉を失い、胸の鼓動の音だけがやけに大きく響いていた。
彼が目を開くのは、もう時間の問題だ。
それがどんな意味を持つのか、僕たちの旅にどんな未来をもたらすのかは分からない。けれど今日を境に、漂流船の沈黙が終わりを迎えつつあることは確かだ。
コメント