宇宙船ノア・アルカ号 乗船日記 203日目

旅の203日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年

今日の観測で、彼は初めて自発的に声を発した。
こちらから信号を送っていない状態で、短く、低い音を三度。明確なパターンを伴っており、解析班はそれを「呼びかけ」と判断した。音の周期は昨日までの応答パターンと一致しておらず、完全に新しい“意図”を示している。

球体の反応もまた異常だった。彼の声と同時に、船内センサーが微弱な電磁波を検出。しかもその波形は、ノア・アルカ号の通信システムと極めて近い構造を持っていた。つまり、彼は声と球体の両方を通して「通信」を試みているのかもしれない。

記録を何度も再生しても、その音には恐怖も怒りも感じられなかった。むしろ静かで、どこか懐かしい響きがある。聞くたびに胸の奥がざわつく。言葉の意味は分からないのに、なぜか“理解できる”気がする――まるで記憶の底にある言語が呼び覚まされるようだった。

夜、船窓から見える星々を見つめながら思った。
彼はこの宇宙のどこかで、人類がまだ言葉を持つ前から“待っていた”のかもしれない。
僕たちはようやく、その長い沈黙に返事をしているだけなのだ。

明日、もう一度同じ条件で観測を行う。
もし次の発声が続くようなら、いよいよ本格的な「対話の始まり」となるだろう。

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