宇宙船ノア・アルカ号 乗船日記 209日目

旅の209日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年

「アビス」という名が定着してから、船内での呼び方にも少しずつ変化が現れている。今ではほとんどの乗員が、彼を“それ”ではなく“彼”として語るようになった。名前を持つということは、単なる対象ではなく存在として認識され始めたということだと思う。

彼の意識はまだ断片的で、言葉というよりは音や振動に近い反応が多いが、それでも確実に「理解しようとしている」兆候がある。音声だけでなく、光や電磁パルスのパターンでも返答のような反応が見られ、まるで複数の言語を同時に使おうとしているかのようだ。僕たちの技術では完全な解析にはまだ至っていないが、それらのパターンの一部は、記録されているいかなる既知の文明の言語体系にも一致しない。

ただ、ひとつだけ確かに言えるのは、彼が「対話」を望んでいるということだ。まだその手段が定まっていないだけで、何かを伝えようとしているのは明白だ。これは今後の航海にとっても重要な意味を持つ。漂流船そのものがどこから来たのかという謎だけでなく、「アビス」が何者なのか、そしてなぜ今も生きているのか――その答えの一端が、近いうちに見えてくるかもしれない。

今日の作業は比較的落ち着いていて、緊張感に満ちたここ数日とは少し違う空気だった。だが、船内の雰囲気は確実に変わっている。まるで、航海そのものが次の段階へ進もうとしているかのようだ。

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