宇宙船ノア・アルカ号 乗船日記 223日目

旅の223日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年

アビスの記憶を探る試みは、今日も新たな局面を迎えた。昨日と同じ星系座標を中心に、空間構造を再構築して提示したところ、彼の反応はこれまでで最も劇的だった。映像が映し出されると同時に、呼吸が急に乱れ、全身がわずかに震えたのだ。恐怖とも、安堵ともつかないその反応は、記憶の奥深くに“何か”が触れた証のように思えた。

さらに注目すべきは球体の変化だった。これまで光のパルスでしか表現されていなかったものが、今日はごく微弱な音として検出されたのだ。人間の耳ではほとんど聞き取れない周波数帯だったが、解析によればそれは「繰り返しのある信号」であり、偶然とは考えにくい。アビスと球体は、光と音の両方で外界に“語りかけ”始めているのかもしれない。

一方で、彼の沈黙はなお続いている。自分の名前以外、言葉は出てこない。しかしその沈黙の奥には、はっきりとした“意志”が感じられるようになった。記憶が戻ったとき、彼は何を思い出すのだろうか。そしてその記憶は、僕たちの未来にどんな影響をもたらすのか。

今夜は静かだ。船内の明かりが落ち、窓の外に広がる星々がやけに近く感じる。
あの星の向こうに、アビスが辿ってきた長い旅の答えがあるような気がしてならない。

明日、さらなる刺激実験を行う準備が整う。
彼の記憶の扉は、確実に、あと一歩のところまで来ている。

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