宇宙船ノア・アルカ号 乗船日記 230日目

旅の230日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年

E-7区画との通信実験を実施した。
予想以上の結果だった。アビスの発した信号――通称「Abyss Code」を入力すると、漂流船側から応答があったのだ。
音ではなく、光だった。
E-7中央部の構造体がゆっくりと明滅を始め、そのパターンは球体の脈動と完全に一致していた。まるで、長いあいだ停止していた“心臓”が再び動き出したようだった。

アビスの反応も顕著で、光が点滅するたびに彼の表情がわずかに変化した。恐怖ではなく、懐かしさ――そんな感情が浮かんでいた。
やがて、彼は再びあの未知の言語を口にした。発声に合わせてE-7の光が強くなる。
解析班は、E-7全体が何らかの意思伝達装置として設計されていた可能性を指摘している。漂流船そのものが「記録媒体」であり、アビスはそれを“再生”する存在なのかもしれない。

ただ、光の変化の終盤、微弱な電磁波がノア・アルカ号にも影響を及ぼした。短時間ではあるが通信系がノイズに包まれ、観測ドローンが一斉に誤作動を起こした。E-7から放たれた信号が船の制御系に干渉したのだろう。幸い、損傷はなかった。

夜、船内が静まり返ったころ、僕は再び観測デッキで星を見上げた。
アビスの記憶は、単なる個人のものではない。
あれは文明そのものの“記憶”なのかもしれない。
そして今、その記憶がノア・アルカ号に語りかけている。

明日は、干渉を抑制した状態で再度通信を行う予定だ。
この光が、呼びかけなのか、警告なのか――まだ判断できない。

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