宇宙船ノア・アルカ号 乗船日記 241日目

旅の241日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年

セリナまでの航路は安定しており、到達まで残り二十日を切った。
船内では降下装備の調整と環境適応シミュレーションが続いている。
空気組成や重力条件を再現した実験室では、バイオ・ヒューマンズたちが植物適応テストを行い、
僕は環境維持ユニットの酸素循環モデルを調整した。
手を動かしていると、いつもの緊張が少し和らぐ。

アビスの反応も引き続き観測を続けている。
ここ数日、セリナの映像を見せるたびに、彼の表情がどこか柔らかくなる。
まるで懐かしいものを見ているように――だが、解析の結果、
彼の脳波に現れる反応パターンは「記憶の想起」ではなく、「類似認識」に近いという。
つまり、アビスがセリナに反応しているのは、この星が彼の故郷に似ているからだ。

僕たちは、ほんの少し安心した。
この星が、彼の過去そのものではない。
けれど、遠い宇宙のどこかに、同じ色の空を持つ世界があるのだと思うと、
それだけで少し、この旅が“孤独なものではない”気がした。

夜、観測窓から見えるセリナは、静かに輝いていた。
あの青緑の光の向こうで、アビスが見ていた空も、きっとこんな色をしていたのだろう。

明日は、セリナの電磁層を通過する際の通信安定テストが行われる。
僕たちはいよいよ、未知の星の“息づかい”に触れようとしている。

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ガドグのアバター ガドグ サブスク見直しライター

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よくchatGPTで遊んでいます。
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