宇宙船ノア・アルカ号 乗船日記 245日目

旅の245日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年

降下ポッドの最終整備が完了した。
エンジニアチームは推進系と姿勢制御を三重構造に再設計し、万が一の電磁干渉にも対応できるようになっている。
ゼオフォスでの事故以降、誰も「完璧」という言葉を軽々しく使わなくなった。
慎重であることが、今の僕たちの誇りでもある。

今日は一日中、船内の環境シミュレーターでセリナの重力・気圧・大気組成を再現した訓練が続いた。
酸素濃度が低いため、呼吸が浅くなる。
それでも、船の人工空気よりも“生きた空気”を吸っている気がした。
ミラが植物用の呼吸補助マスクを試作していて、香りが微かに海藻に似ていた。
懐かしい匂いだった。

アビスは今日も観測室にいた。
セリナのデータを映すたびに球体が静かに反応し、淡い光を保ち続けている。
反応は安定していて、以前のような強い干渉は見られない。
この星を“知っている”というより――“覚えている”ように見える。
だが、それが記憶なのか、ただの共鳴なのかは分からない。

夜、観測窓に映るセリナは、すでに小さな球体として姿を見せている。
その輪郭は、ゼオフォスよりも穏やかだ。
青緑の光の中に、まるで僕たちを受け入れるような静けさがある。

明日は降下チームのリハーサルが行われる。
慎重に、冷静に、けれど確実に――あの星の地を踏む日が近づいている。

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よくchatGPTで遊んでいます。
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