旅の252日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
セリナまでの距離は、航路上で残りおよそ十二日。
ここ数日で恒星光の色味がゆっくりと変わっているのが分かる。
青緑の帯が少しだけ濃くなった。星が近づいている証拠だ。
今日は降下計画の再調整が主な仕事だった。
ゼオフォスの経験から、危険要素を過剰なくらい洗い出している。
生命反応の有無、大気圧変動、地殻の不安定性。
どれも現段階では“問題なし”だが、油断は禁物だ。
アビスは医療ユニットで簡単な検査を受けていた。
脳波の状態は安定しており、以前見られた急激な変動はほとんど消えている。
セリナの映像を見せたときの、あの穏やかな反応が印象に残っている。
やはり彼にとって、あの星は特別な意味を持つのだろう。
理由は分からないままだが、焦らず見守っていくしかない。
夕食は久しぶりに軽めのものにした。
ケイトが用意してくれた温野菜パックと栄養バー。
味は控えめだが、こういう日も悪くない。
体も頭も、少し休ませておくべき時期だと思う。
静かな一日だったけれど、
こういう“何も起きない日”が、今はありがたい。
明日は大気分析装置の再校正を行う予定。



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