宇宙船ノア・アルカ号 乗船日記 254日目

旅の254日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年

セリナまでの距離は、航路上で残りおよそ十日。
ようやく二桁を切った。
とはいえ、ここからが一番気を抜けない区間だ。
セリナの磁場データや大気の揺らぎが、接近に伴ってより詳細に拾えるようになり、
センサーのログも一気に量が増え始めた。

今日は、酸素循環ラインとフィルターユニットの総点検を行った。
酸素濃度を調整する藻類系のバイオフィルムが少し疲弊していて、
ミラと一緒に再活性処理をした。
植物系ユニットは本当に船の“肺”だと実感する。
ここが健全なら船内の空気も安定し、乗員の心も落ち着く。

アビスは今日、ほとんど医療区画で過ごしていた。
医療班による定期チェックの間、
彼は静かに球体を手元で転がし、その光の揺らぎを見つめていた。
あの球体は彼にとって記憶の鍵なのか、
それとも“帰る場所”の象徴なのか。
言葉にできない何かを抱えているのは、傍で見ていても分かる。

夜、セリナの最新映像データを確認した。
雲の層が複雑に渦を巻いているが、
大気の安定性は良好。
地表の赤外線反射パターンも、居住可能域の広がりを示している。
希望と不安が半々、というのが正直なところだ。

今日はケイトが久しぶりに海藻パスタを作ってくれた。
素朴な味だけど、どこか懐かしい。
こういう日常の小さな安心が、旅を長く続ける力になる。

明日はゼインたちと降下ポッドの最終整備だ。
一つずつ確実に。

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

ガドグのアバター ガドグ サブスク見直しライター

キン肉マンと特撮を愛する怪人。
よくchatGPTで遊んでいます。
1児の父という顔も持つ。

コメント

コメントする

目次