旅の278日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日は、降下手順の最終確認を行った。
どの工程もすでに何度も確認してきた内容なのに、いざ“明日かもしれない”という段階になると、一つひとつの動作が重く感じられた。
慎重すぎるくらいでちょうどいい――そう自分に言い聞かせながら作業を進めた。
降下メンバー候補の名前も徐々に固まりつつある。
僕もその中に含まれているが、胸の奥にあるのは興奮ではなく、限りなく澄んだ緊張に近い。
セリナは静かすぎる星だ。
だからこそ、最初の一歩を踏み出す者には
最大限の準備が必要だ。
今日の大きな変化といえば、ドローンが追加で取得してきた地表の微細データに、“わずかな乱れ”が見つかったことだ。
生命の痕跡ではなく、人工物でもない。
自然のゆらぎにも見えるし、完全なノイズにも見える。
これが何を示しているのかは、まだ断言できない。
ただ、この星が完全に“透明”ではないという事実だけが残った。
アビスは医療区画で軽い運動をこなしていて、以前より歩き方が自然になっていた。
彼の存在をどう扱うべきかという議論は、今は落ち着いている。
彼自身が静かに生活に馴染んでいるからだろう。
夕食は野菜プロテインのグリルとスープ。
ケイトが「明日も落ち着いていこう」と言ってくれた。
その言葉が、今日一番効いた気がする。
明日は、いよいよ降下の最終決定が下される予定だ。
セリナの静けさの裏に何があるのか、確かめる時が近づいている。



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