旅の305日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
居住ブロックの構造について改めて確認した。切り離し機構や自律制御系は後付けではなく、ノア・アルカ号の設計段階から想定されていたものだという。船は最初から、どこかの星に自分の一部を残す前提で造られている。そう考えると、今の状況は特別ではなく、計画通りの一形態なのかもしれない。
切り離された居住ブロックは、地表で独立した生活を維持できる。電力や水循環も船に依存しきらず、最低限の自律が可能だ。仮設住宅というより、文明の最初の単位に近い。ノア・アルカ号は、星に降りるたびに形を変える存在なのだと実感した。
地表では設置予定地点の最終確認が行われた。地盤の安定性や地下水との距離も問題ない。派手な達成感はないが、ここに人が暮らす準備が静かに整っていく。
地球との通信は相変わらず時間がかかっている。こちらの報告はすでに送ってあり、補充スケジュールの返答を待つ段階だ。距離と時間を挟んだやり取りに慣れることも、これからの生活の一部になる。
夕食は簡単な温かい食事だった。今日は不思議と落ち着いて食べられた。
この船は、移動するためだけのものではない。残し、分かれ、また進むための形を持っている。その設計思想を、セリナの地表で初めて実感している。



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