旅の307日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日は親しい仲間たちと作業する時間が多かった。特別な話をしたわけではないが、同じ場所で同じ手順を確認し、黙々と手を動かすだけで意思疎通が成立する。長い航海の中で、言葉にしなくても分かる感覚が少しずつ育ってきたのだと思う。
ゼインは電力系統の再配線を担当していた。数値を確認する目は相変わらず鋭く、余分な動きがない。彼の仕事ぶりを見ると、この環境でも基盤は崩れないと感じられる。ライラは医療区画の地表展開を想定したチェックを進めていて、生活が始まることを前提に考えが切り替わっているのが分かった。
ケイトは食料配分の再計算に追われていた。全員が地表で生活する期間を想定し、無理のない計画を淡々と組み直している。エリスは記録の整理を続け、判断の経緯が後から追えるように構造を整えていた。誰もが、自分の役割を過不足なく果たしている。
こうして並んで作業していると、ここで生まれた信頼は場所に依存しないものだと感じる。セリナに残る者も、次へ進む者も、この関係そのものは変わらない。
夕食は全員で簡単に済ませた。話題は作業の確認が中心で、笑い声は多くなかったが、空気は落ち着いていた。
親しい仲間がいるという事実は、進む選択を軽くするわけではない。ただ、その選択を孤独なものにしない。それだけで、十分だと思う。



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