旅の310日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日は地下水サンプルの解析に多くの時間を使った。水質そのものは想定どおり安定しており、飲料や農業利用に向けた処理計画にも問題は見当たらない。ただ、その過程で、ごく微細な反応がいくつか検出された。
有機由来とも無機由来とも断定できない数値で、通常の生命反応センサーでは見逃される程度のものだ。代謝と呼べるほどの活動も確認できない。それでも、完全な無反応とは言い切れない揺らぎが、水の中に残っている。
これを生命と呼ぶべきかどうかは、まだ判断できない。少なくとも、地表で想定してきたような生態系とはまったく異なる。長い時間、ほとんど変化せずに存在してきた何か。その可能性が、数値の中に示されているだけだ。
船ともこの結果を共有したが、結論を急ぐ声はなかった。地下という隔離された環境で、星が持ち続けてきた状態なのだとすれば、こちらが軽々しく意味づけるものではない。
夕食は簡単な保存食だった。今日は味よりも、水のことが頭から離れなかった。
セリナは、何もない星だと思っていた。だが正確には、何も語らない星なのかもしれない。その沈黙をどう扱うかは、これからの判断に静かに影響していくだろう。



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