旅の312日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日は地表での作業時間が少し長く、防護服を着たまま過ごす時間も増えた。
動きにくさはあるが、完全な宇宙服ほどの圧迫感はない。それでも、この星の大気に身を預けている感覚はなく、常に一枚隔てて触れているだけだと実感する。
セリナには確かに大気がある。数値上も安定していて、致命的な要素は見当たらない。
ただ、呼吸補助を外そうとは思わない。空気は存在しているが、こちらを受け入れているわけではない。そんな距離感を、防護服越しに感じている。
風はほとんどなく、音も少ない。大気が動いていないという表現が一番近い。
地球では、空気は常に何かを運び、何かを変えていた。ここでは、空気は留まり、形を変えない。その静けさが、この星の本質なのだと思う。
作業を終えてスーツを脱ぐと、身体が少し軽くなった。
装備を外したというより、境界を越えなかったことに安堵した感覚に近い。まだ、この星に直接触れる段階ではない。
夕食は簡単な温かい食事だった。船内の空気は、やはり落ち着く。
セリナは人が立てる星ではある。ただ、人を包み込む星ではない。
その違いを、防護服の重さが静かに教えてくれている。



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